やる気では続かない:健康習慣を “設計” で考える
「今年こそ運動を続けよう」と思い立ち、ランニングシューズを買ったものの、
気づけば下駄箱の奥で眠っていた ─。
そんな経験を持つ人は少なくないと思います。
私自身もそうでした。
朝5時に起きて走ろうと決意した時期がありましたが、三日坊主。
プロテインを飲み続ける計画も、1週間で途切れました。
振り返ってみると、どれも「やる気」や「意志」に頼った始まり方でした。
けれど、10年以上続いている行動がひとつあります。
それが「階段の登り降り」です。
当初は昼食後に、最近は朝活として、身近な階段をひたすら往復する ─ たったそれだけ。
特別な運動ではありませんが、気づけば体力・姿勢・集中力が変わりました。
この差は何か?
それは「意志」ではなく「設計」にありました。
続く行動には、共通の構造があります。
それは “摩擦が少なく、日常に埋め込みやすく、成果が見える” ということ。
つまり、「続けよう」と思わなくても続く仕組みが、無意識に組み込まれていたのです。
本記事では、階段登り降りの習慣をケーススタディに、
「意志に頼らず続く行動」をつくる “設計思考” を解き明かします。
健康・副業・学び、どんな習慣にも応用できる考え方です。
健康習慣が続かない本当の理由

「どうして私は続かないんだろう」。
健康習慣が途切れたとき、多くの人がそう感じます。
でも実は、「続かない」こと自体が自然なことです。
人間の脳は “変化を避ける” ようにできているからです。
脳には、現状を維持しようとするホメオスタシス(恒常性維持機能)があります。
つまり、新しいことを始めようとすると、脳は「危険」と判断して抵抗する。
やる気や意志で一時的に動けても、数日後に反動が来るのはこの仕組みのせいです。
たとえば私も、過去に朝5時ランを始めたときは、初日こそ達成感がありました。
けれど3日目になると、布団の中で「今日は休んでもいいか」とつぶやいていました。
その瞬間、脳が “現状維持モード” に戻っていたのです。
私たちはよく「意志が弱いから続かない」と自分を責めます。
けれど、意志の力は有限です。
行動科学では「意志力は筋肉のように疲労する」と言われています。
つまり、“意志に頼る設計” そのものが破綻しやすい構造を持っているのです。
一方で、10年以上続けている階段の登り降りは、まったく同じ脳でも続けられました。
その違いは「始め方」でした。
私は “がんばる” ではなく、“生活の流れに組み込む” という発想で始めたのです。
歯みがきのように、意志を使わずにできるレベルまで落とし込む。
この「無意識でも続く構造」が、継続の正体でした。
つまり、健康習慣が続かない理由は「意志の弱さ」ではなく、「設計の欠如」です。
意志は短期的なエネルギー。設計は長期的な仕組み。
行動を支えるのは、感情ではなく構造です。
続かない原因を自分の性格に求めるのではなく、
行動の “構造設計” に目を向けること。
これが、健康習慣を資産に変える第一段です。
出典:Ego depletion
The Strength Model of Self-Control
習慣が “残る” ための3つの設計条件

習慣を続けるためには、意志よりも「設計」に目を向けることが大切です。
ここでは、私自身が階段の登り降りを10年以上続けてきた中で気づいた、
“自然に残る行動” の共通点を3つ紹介します。
① 摩擦を減らす:「始めるコスト」を極限まで下げる
私たちの行動を止めているのは「やる気の欠如」ではなく、実は「摩擦」です。
摩擦とは、「始める前に必要な準備や判断の数」を指します。
たとえば「ジムで運動する」と聞くと、
・着替えを用意する
・移動する
・利用時間を調べる
─ こうした工程が頭に浮かびます。
その瞬間、脳は「めんどうだ」と判断し、行動が止まります。
一方、階段の登り降りはどうでしょう。
靴も不要、時間も自由、場所もすぐそこ。
この “ゼロ準備行動” こそが、私が10年以上続けられた最大の理由でした。
行動科学の世界では「Choice Architecture(選択の設計)」という概念があります。
人は “始めやすい構造” に置かれると、自然に行動する。
逆に、選択肢が多いほど動けなくなる。
健康習慣を作る第一歩は、「始める摩擦を1つでも減らす」ことです。
運動用の靴を玄関に置く、階段を使うルートを固定する、時間を決めない ─。
行動のハードルを下げる工夫が、“意志を使わない継続” を生みます。
② 日常に埋め込む:「特別なこと」にしない
「続ける=時間を確保する」ではありません。
むしろ大切なのは、「日常の流れに差し込む」ことです。
私の場合、起床後にまず水素水を一杯飲み、
朝食とともに乳酸菌入りの青汁牛乳を飲みます。
その流れのまま階段へ移動し、60分ほど登り降りをします。
特別に「運動の時間」を確保している感覚はなく、
それも朝のルーティンの一部です。
この “朝の流れ” を設計してから、「運動しよう」と考えること自体がなくなりました。
コーヒーを飲むように自然に身体が動く。
それが、日常に習慣を埋め込むということです。
脳は、毎日の決まりごと(ルーティン)を「エネルギー消費ゼロの行動」として扱います。
そのため、歯みがきや入浴のように“考えなくてもやる”状態になれば、
意志の消耗はゼロになります。
ポイントは、「何かをやめて時間を作る」よりも
「すでにある流れにくっつける」こと。
通勤、家事、休憩、移動 ── その中に “1動作” 挿し込めばいい。
特別な時間に頼る習慣は続きません。
日常の中に埋め込まれた習慣だけが、長期的に残ります。
③ 数値で確認できる:「進捗の見える化」が報酬になる
続く習慣には、もう一つの共通点があります。
それは、「進捗が見えること」です。
人の脳は、成果を “数値” で確認できるとドーパミンが分泌され、
「またやろう」という気持ちが自然に湧きます。
これを心理学では “報酬予測” と呼びます。
私は階段登り降り朝活をスマートウォッチで記録しています。
段数や消費カロリーを眺めるだけで、ちょっとした達成感が得られる。
「昨日より少し多かった」「1週間で1,000段上った」 ─
そうした小さな実感が、次の行動を呼び起こします。
この仕組みは、副業や学習にもそのまま応用できます。
たとえば「作業時間を見える化する」「アウトプット数をカウントする」。
数値化は “進捗の感情化” であり、モチベーションの源泉になります。
行動を「測る」「残す」「見返す」。
この3ステップを設計に組み込むことで、
習慣は “やる気に依存しない構造” へと変わっていきます。
出典:Making health habitual: the psychology of ‘habit-formation’ and general practice
健康習慣が続く仕組み:意志よりも「設計」で動く身体をつくる
摩擦を減らし、日常に埋め込み、数値で確認する。
この3条件が揃うと、行動は “努力しなくても残る” ようになります。
それはつまり、習慣が自分の外に設計されているということ。
この考え方が、持続可能な健康習慣の中核です。
そして何よりうれしいのは、
“がんばらなくても続けられる自分” に出会えた瞬間、
心がふっと軽くなることです。
行動の設計は「環境」で決まる

どれだけ意志があっても、環境が逆を向いていれば行動は続きません。
逆に言えば、「続く人」は、強い意志を持っているというより、
続けやすい環境を自分のまわりに設計しているのです。
私は以前、「やる気がある日にまとめて頑張る」というタイプでした。
しかしそのやり方では、1週間もすれば反動がきます。
朝起きて、「今日は忙しいからやめておこう」と思った瞬間、
その習慣は途切れてしまう。
ところが階段の登り降りを続けられたのは、
「気分に左右されない環境」をあらかじめ作っていたからでした。
たとえば ─
- 階段のそばにお気に入りの音楽プレイヤーを置く
- 朝一番に階段を通る動線に変える
- 登り降りし終えたらデスクに “水素水” を置いておく
これらは小さなことですが、環境が行動を自動化する仕掛けになっています。
やる気がゼロの日でも、
「通りかかったからついでに登る」 ─ それで習慣は維持できるのです。
行動経済学では、これを「ナッジ理論」と呼びます。
ナッジとは、“人の選択をさりげなく後押しする仕組み” のこと。
つまり、“自分の行動を良い方向にナッジする” 設計を作れば、
意志が弱くても自然に動ける環境が整います。
私が提案したいのは、「やる気を出す前に、やる環境を作る」という考え方です。
気分を変えようとするよりも、
“気分に関係なく行動できる環境” を整えたほうが、
はるかに現実的で、再現性があります。
たとえば、デスクワークの人なら「階段を使う動線」を一度だけ再設計する。
在宅勤務なら、階段の登り降りを “区切りのサイン” に使う。
そうやって、行動のトリガー(引き金)を生活の中に埋め込むこと。
続く習慣とは、「強い意志を持つ人のもの」ではなく、
「環境を味方につけた人のもの」なのです。
出典:Nudge theory
健康×複利: “小さな設計” が未来を変える

金融の世界では「複利は人類最大の発明」と言われます。
小さな利回りでも、時間をかけて積み上げることで
指数関数的に成果が増えていく仕組み。
実は、健康にもまったく同じ法則が働きます。
1日5分の階段の登り降りでも、1年、3年、10年と続けるうちに、
体力・代謝・姿勢・集中力が静かに底上げされていきます。
その変化は一朝一夕では見えませんが、
ふとした瞬間に「疲れにくくなった」「心が安定した」と感じる。
それこそが、健康の複利効果です。
健康習慣の複利を生むポイントは、
派手なトレーニングや短期的な成果ではなく、
「構造が壊れない設計」を作ること。
つまり、多少サボってもまた戻れる仕組みを
最初からデザインしておくことが重要です。
たとえば階段の登り降りなら、
「朝できなくても昼や夜にできる」「1分でもOK」というルールを設定する。
完璧を目指さず、続けられる範囲を残しておく。
この “余白” が、継続の寿命を伸ばします。
複利とは、続けられる人だけが得られる報酬です。
そして続けられる人とは、意志の強い人ではなく、
設計が上手な人。
健康も副業も、結果を出す人ほど「構造」を整えることに時間を使っています。
行動の設計を小さく積み重ねることが、
未来の自分への最高の投資になる。
それが「健康×複利」という考え方の本質です。
健康習慣の複利効果を高める設計術
継続できる人=意志が強い人ではなく、設計が上手な人。
健康も金融と同じく、時間をかけて育つ「複利資産」です。
続く構造とは、壊れにくい設計のこと。
“完璧を目指さない設計” が、習慣を長寿化させます。
小さな行動を淡々と積み重ねることが、未来の自分を変える力になります。
そして何より──
「続けよう」と力むのをやめた瞬間から、本当の意味で続き始めるのだと思います。
まとめ:仕組みが人を助ける – “設計思考” で生き方を軽くする

続かないことで自分を責める人ほど、
実は「頑張り方」を間違えているだけです。
多くの人は、行動を “気合い” で乗り越えようとします。
でも、行動は気合いではなく、仕組みで支えるものです。
私が階段の登り降りを10年以上続けられたのは、モチベーションが高かったからではありません。
むしろ「気分が乗らない日でもできる構造」をあらかじめ作っていたからです。
その結果、行動が「努力」から「流れ」へと変わりました。
歯みがきのように、考えなくてもできる。
この “軽さ” こそ、設計の力です。
そしてこの考え方は、健康に限りません。
副業の作業習慣や学び直しの時間管理など、
どんな分野でも「意志に頼らず設計で進める」発想が役立ちます。
たとえば、
- 1日の作業開始を “階段昇降後” に固定する
- 仕事を始める前に「10分だけ歩く」を設計する
こうした小さな仕組みが、脳をリセットし、生産性を高めてくれます。
意志が続かないときこそ、設計を見直すチャンスです。
「どんな環境なら、自然にやってしまうか?」
その問いを持てば、続ける力は自分の外に生まれます。
仕組みが人を助ける。
それは、努力をやめるということではありません。
“努力しなくてもできる環境を自分で作る”ということ。
今日からできる最初の一歩は、
「摩擦をひとつ減らす」ことです。
靴の置き場所を変える、階段を通るルートを固定する、
スマホの通知を減らす ─ それだけでも行動は変わります。
意志に頼らず、環境を整える。
その小さな設計が、健康も仕事も、
そして生き方そのものを軽くしていきます。
継続できる人の思考法:仕組みで動く人生のつくり方
意志ではなく、仕組みで人生を動かす。
続かないのは「性格」ではなく「設計」の問題です。
気分に左右されない “流れ” をつくることこそが、
健康にも仕事にも共通する継続の本質です。
行動は努力で変えるよりも、環境で設計したほうが長持ちします。
今日からできることを一つ整えるだけでも、
未来の自分が驚くほど軽く動き始めるかもしれません。
そして ─
続けることが苦しくなくなったとき、
ようやく「自分らしいリズム」が見えてくるのだと思います。
おことわり
本記事は、筆者の実体験および一般的な健康・行動科学の知見をもとに構成しています。
内容は特定の医療行為・治療法・サプリメント摂取などを推奨するものではありません。
また、効果や感じ方には個人差があります。
健康状態や体調に不安がある場合は、医師や専門家にご相談のうえ、ご自身の判断で実践してください。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。
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