軽EVの電費、実際どうなの?:eKクロスEV を選んだ理由
EVが身近な選択肢になりつつある今、「軽EV」というジャンルが静かに注目を集めています。
その中でも、三菱の eK X EV(eKクロスEV) は、日常の足としての実用性と、電気自動車ならではの静かさ・加速の良さを兼ね備えたモデルです。
私自身も、「通勤や買い物の短距離メインなら、ガソリン車よりも経済的かもしれない」と感じ、2023年に eKクロスEV を選びました。
しかし実際に乗ってみると、ひとつ大きな壁にぶつかります。
——それが「季節によって電費が大きく変わる」という現実でした。
カタログ上の航続距離(約180 km)を見て安心していても、寒い冬には130 kmほど、暑い夏には150 km前後と、走れる距離が目に見えて変わります。
最初は「え、こんなに違うの?」と驚きましたが、走行データを追ううちに、気温・暖房・冷房・バッテリー特性が密接に関わっていることが分かってきました。
本記事では、私の実走経験をもとに、eKクロスEVのリアルな電費を季節ごとに比較し、
- 「なぜ冬と夏でこんなに差が出るのか?」
- 「どんな使い方をすれば電費を抑えられるのか?」
を、具体的なデータとともに整理していきます。
eKクロスEV に興味がある方、すでに乗っていて電費に悩んでいる方にとって、現実的なヒントになれば幸いです。
カタログ値と実電費のギャップ:WLTCモードの落とし穴

eKクロスEV を購入するとき、まず気になるのが「航続距離はどれくらい走れるのか?」という点だと思います。
カタログ上では、一充電あたりの走行距離は180 km(WLTCモード)とされています。
しかし、実際に走ってみると — この数字には少し “罠” があります。
WLTCモードとは、国際的な試験基準で「市街地・郊外・高速道路」を想定して計測された平均値です。
ただし、あくまで気温20〜25℃・エアコンOFF・一定の運転条件という理想環境でのデータです。
つまり、実際の生活環境とは大きく異なるのです。
私の eKクロスEV の実走データでは、以下のような結果が出ました。
- 春・秋(気温15〜25℃):
- 電費 約8.0〜8.5km/kWh → 航続距離 約160〜170km
- 夏(気温30℃超・エアコンON):
- 電費 約7.0km/kWh → 航続距離 約140km
- 冬(気温5℃未満・ヒーター使用):
- 電費 約5.5〜6.0km/kWh → 航続距離 約110〜130km
同じ eKクロスEV でも、季節で30〜40 kmの差が生まれるのです。
これは小型のバッテリー(20 kWh)を積む軽EVならではの特徴で、冷暖房やバッテリー効率の低下が電費にダイレクトに響きます。
特に冬場は、ヒーターが電気を多く消費するため、電費悪化の要因になります。
エンジンを持たないEVでは、熱を作るために電力を使うしかないため、暖房使用時は1時間あたり1〜2 kWh消費するケースも珍しくありません。
これは、短距離中心の走行でも航続距離を大きく削る原因となります。
「カタログでは180 kmと書いてあるのに、実際は120 kmしか走れない」 —
この違和感は、多くの eKクロスEV オーナーが最初に感じる “ギャップ” ではないでしょうか。
ただし、裏を返せば、条件を整えれば電費を大きく改善できるということでもあります。
冬の電費はどこまで落ちる?:寒冷期の実走データと原因分析

EVに乗っていて最も驚かされるのが、冬の電費低下です。
私の場合、 eKクロスEV を12月〜2月にかけて使うと、同じルートでも走行距離が一気に短くなります。
例えば、春や秋なら片道20 km×往復でも余裕があったバッテリーが、真冬になるとメーターの減りが早く、体感で2〜3割ほど電費が悪化する感覚があります。
実際のデータを見ても、気温が10℃を下回るあたりから電費の落ち込みが顕著です。
私の計測では、
- 気温5℃:電費 約5.8km/kWh
- 気温0℃:電費 約5.0km/kWh
と、バッテリー1kWhあたりの走行距離が1km以上短くなる傾向がありました。
これは、単純に「寒いから」というだけではありません。
要因はいくつかあります。
まず、リチウムイオンバッテリーは低温で性能が落ちるという特性があります。
内部の化学反応が鈍くなり、電圧が下がることで「同じ電力量でも取り出せるパワーが少なくなる」状態になるのです。
つまり、エネルギーそのものが減るのではなく、効率的に使えなくなるのがポイントです。
次に暖房です。
eKクロスEV はガソリン車のようにエンジン熱を利用できないため、ヒーターの電熱線で空気を温める構造です。
これが非常に電力を使います。
1時間暖房を入れっぱなしにすると、走行距離が10〜15 km分減ることも珍しくありません。
特に発進直後、車内が冷え切っている状態ではヒーターがフル稼働し、電費の悪化を加速させます。
さらに、タイヤの転がり抵抗の増加も地味に効いてきます。
寒さで空気圧が下がり、路面も湿って滑りやすくなるため、結果的にモーターの負荷が上がります。
このように、冬は「機械的・環境的・行動的」な要因が重なり、 eKクロスEV にとって最も過酷な季節と言えます。
ただし、悪化の度合いを把握しておけば、工夫である程度は抑えられます。
たとえば、通勤や買い物など短距離中心の使い方なら、暖房を “使うタイミング” を意識するだけでも変わります。
冬に電費を改善する3つのポイント

冬の eKクロスEV は、気温や暖房使用の影響でどうしても電費が落ちます。
ですが、ちょっとした工夫で消費電力量を抑え、航続距離を延ばすことは十分可能です。
ここでは、私が実際に試して効果を感じた3つの方法を紹介します。
① 出発前の「プレコンディショニング」を活用する
もっとも効果的なのが、出発前にエアコンで車内を温めておく「プレコンディショニング」です。
充電ケーブルをつないだ状態でエアコンをONにすれば、電力は外部電源から供給され、バッテリー残量を減らさずに暖気できます。
朝の出勤前、スマホアプリ「MITSUBISHI CONNECT」で設定しておくと、乗り込んだ瞬間から車内が温かく、走行開始後のヒーター負荷が大幅に軽減されます。
これだけで電費が約10〜15%改善した感覚がありました。
② 暖房よりも「シートヒーター」を優先的に使う
eKクロスEV には、運転席・助手席にシートヒーターが装備されています。
車内全体を温めるヒーターよりも、身体を直接温める方が圧倒的に効率的です。
私の場合、外気温0℃でも、シートヒーター+少しのデフロスト運転だけで十分快適でした。
ヒーターを使う時間を減らすことで、1回の充電あたり10 km前後の航続距離アップが期待できます。
③ タイヤの空気圧を「季節ごとに」チェックする
冬は気温が下がると空気圧も低下し、転がり抵抗が増えて電費が悪化します。
寒波の時期は、指定値より少し高めに調整しておくと安定します。
特に通勤や買い物など短距離走行が多い人ほど、空気圧が下がることによるロスが積み重なりやすいので要注意です。
タイヤのコンディションは安全性にも直結しますから、電費と安全を両立するメンテナンスとして意識したいポイントです。
冬はどうしても厳しい季節ですが、こうした “小さな工夫” の積み重ねで、体感的に走行距離を延ばせることを実感しました。
夏の電費は安定?:エアコン使用時のリアル

冬の電費低下を体感したあと、私は「夏なら改善するはず」と期待していました。
しかし、実際に eKクロスEV で真夏を走ってみると、思っていたほど “安定” とは言えない結果でした。
7月〜9月の平均気温30℃前後の時期、私の実測では電費が約7.0〜7.5 km/kWh。
春や秋(8.0〜8.5km/kWh)と比べると、約10〜15%ほど悪化していました。
冬のように極端ではないものの、暑さによるエアコン使用が確実に影響していることがわかります。
EVの冷房は、ヒーターほどの電力を使わないとはいえ、コンプレッサーを稼働させるため、渋滞や信号待ちの多い街乗りでは電費がじわじわ落ちます。
特に eKクロスEV は軽EVゆえにバッテリー容量が20 kWhと小さく、電力消費の変化が航続距離に直結します。
真夏の昼間、外気温が35℃を超えるような日にエアコンを設定温度22℃で使うと、航続距離が150 km→130 km前後にまで下がるケースもありました。
さらに、冷房による電費以外にも、バッテリー温度上昇による制御が関係しています。
リチウムイオンバッテリーは高温にも弱く、温度が上がりすぎると出力を制限して寿命を守る仕組みが働きます。
この制御によって、アクセルレスポンスがやや鈍くなったり、充電時の効率が下がったりすることもあります。
ただし、冬に比べると「走行時の工夫」で改善しやすいのが夏の特徴です。
例えば、出発前に短時間の換気をして車内温度を下げる、日陰に駐車する、風量を「AUTO」より1段下げる — といった小さな工夫で、電費の落ち込みを緩和できます。
夏場の eKクロスEV は、快適さと電費のバランスをどう取るかが鍵になります。
夏にできる電費キープ術

冬ほどではないにせよ、夏も eKクロスEV の電費は油断できません。
ただし、暑さ対策と電費対策は両立できます。
ここでは、私が実際に行っている「快適さを保ちながら電費を守る」工夫を3つ紹介します。
① 駐車位置と車内温度をコントロールする
真夏の日差しの下に数時間置いておくと、車内温度は50℃を超えます。
この状態でエアコンを使うと、最初の数分で大量の電力を消費します。
私はできるだけ日陰や屋内駐車場を選び、サンシェードも活用しています。
また、乗車前に窓を全開にして1〜2分換気するだけで、冷房負荷を大幅に減らせます。
② 風量・温度設定を固定せず、こまめに調整する
eKクロスEV のエアコンは自動制御が優秀ですが、常に「AUTO」モードのままだと冷やしすぎになることがあります。
私は設定温度を26〜27℃、風量を中程度に固定し、体感温度に応じて手動で微調整しています。
これだけで、同じルートを走っても1回の充電あたり10 km前後の差が出ました。
③ ドライブモードを「NORMAL」から「ECO」へ
eKクロスEV にはECOモードが搭載されています。
夏場は加速性能を求める場面が少ないため、ECOモードで穏やかに走るのがおすすめです。
モーター出力とエアコン制御が抑えられることで、電費が5〜10%ほど改善します。
ストレスを感じることも少なく、街乗りでは十分実用的です。
夏の電費対策は、「いかに車を冷やしすぎないか」に尽きます。
涼しさを保ちつつ、エネルギーを効率的に使う工夫を積み重ねることで、EVライフはより快適で現実的になります。
冬と夏の電費比較まとめ:差は約30%

ここまで、三菱 eKクロスEV の冬と夏の電費をそれぞれ見てきました。
実際に走行してみると、季節ごとにどの程度の違いがあるのか、数値で整理すると次のようになります。
| 季節 | 平均電費(km/kWh) | 想定航続距離(20 kWh換算) | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 春・秋 | 約8.2 | 約165 km | 外気温安定・エアコン控えめ |
| 夏 | 約7.2 | 約145 km | エアコン稼働・バッテリー温度上昇 |
| 冬 | 約5.8 | 約115 km | 暖房使用・低温による効率低下 |
同じクルマでも、春秋と冬では約30%の差が出ていることが分かります。
この変化は、 eKクロスEV だけでなく、多くの軽EV・小型EVに共通する傾向です。
特にバッテリー容量20 kWhクラスでは、1 kWhあたりの走行距離が1 km落ちるだけで、航続距離全体に大きな影響が出ます。
そのため、日々の運転や環境条件の積み重ねが、結果的に「1回の充電で走れる距離」を左右するのです。
一方で、冬と夏で電費が違うという前提を理解し、走行前の準備や運転スタイルを工夫すれば、その差をかなり小さくできます。
EVは「燃費がいい・悪い」というよりも、「条件に応じて変わる効率を読み解く乗り物」なのだと感じます。
eKクロスEV は “気温に敏感なパートナー”:上手に付き合うために

ここまで見てきたように、三菱 eKクロスEV の電費は季節によって明確な差があります。
冬は寒さでバッテリー効率が落ち、暖房による電力消費が増える。
夏はエアコンや高温によるバッテリー制御の影響が出る。
最初のうちは「EVはデリケートだな」と感じるかもしれません。
けれど、実際に一年を通して乗ってみると、気温や使い方に合わせて付き合う感覚が心地良くなってきます。
日々の小さな工夫 — 出発前のプレコンディショニング、エコモードの活用、駐車場所の選び方 — で、航続距離が確実に変わる。
そしてその変化が、まるで “クルマとの対話” のように感じられるのです。
eKクロスEV は、単なる移動手段ではなく、生活リズムや環境意識を整えてくれる存在だと私は思います。
「今日は寒いから少し早めに暖気しよう」「今日は気温が高いからモードをECOにして走ろう」—
そうした意識の積み重ねが、自然と自分の行動や習慣を整えてくれるのです。
EVライフは、数値と感覚の両方を楽しむ旅です。
電費の変化を知ることは、車の性能を理解するだけでなく、自分の暮らしを見つめ直すきっかけにもなります。
eKクロスEV と一緒に、四季の変化を感じながら “効率と心地良さのちょうどいいバランス” を探していきましょう。
おことわり
本記事で紹介している電費データや走行距離は、筆者が使用する三菱 eKクロスEV (2023年式)を使用し、実際の運転状況に基づいて記録したものです。
走行条件(気温・地形・交通状況・使用機能・積載量など)によって数値は大きく変化します。
あくまで一例としての参考値としてご覧ください。
また、電費改善の工夫・設定値などは筆者の体験に基づくものであり、必ずしもすべての環境・車両で同じ効果が得られるとは限りません。
安全運転とメーカー推奨の使用方法を優先し、ご自身の判断で活用いただければ幸いです。
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